宮部みゆき『理由』感想

宮部みゆきさんの『理由』を読みました。

理由 (朝日文庫)

 

 

内容は、現代社会の問題を織り込んだ非常に読みごたえのあるものでして、私はハードカバーで読んだのですけれど500ページ超の超大作でありました。

 

物語の中身に迫った感想は控えますが、とあるマンションの1室で発生した一家殺人事件を様々な視点から描いております。

『理由』という小説は、つまるところ「家族」を描く小説だと私は感じていて(もちろん事件の背景にある社会問題も見逃せないポイントではありますが)5家族以上の家庭がこの物語には登場します。それぞれ家族構成や人柄、生活や家庭内の問題が丁寧に描かれており、それぞれが何らかの形で事件に関わってくる。

色々な家族があって、色々な問題があるわけだけど、根っこにあるのは家族だからこそ生まれるコミュニケーションの齟齬だったりするわけです。赤の他人との付き合いで発生するコミュニケーションのズレとはまた違う話なのだな…と思いました。相手を思っているが故に、生まれてしまうもの。容易には切り離せない縁から生じる、鬱陶しさ。

でも物語の結論としては、家族を肯定するようなものだったのかな、と思いました。

 

神の視点で登場人物たちを見ていると、ものすごくじれったいわけです。そんなことウダウダ考えてないで言いたいこと言っちゃえよ、とか。売り言葉に買い言葉なのだからお互い冷静になってさ、とか。でも実際自分事として考えると、家族って上手くいかないものです。私もつい言いすぎてしまうところとか、甘えてしまうところとかがあるなぁ...と自分の行いを振り返ってしまいました。家族って、難しい。

 

事件が発生した部屋、2025室に住んでいた家族は、殺されずに済んだと思います。何かがズレていれば、起きなかったと思う事件でした。この家族が救われるポイントは無数にあっただけに、どうしてこの家族は救われなかったのか、考えてしまう私なのでした。

 

もう一度言うけど、家族って難しい。そして、家族はありがたい。「家族とは何か?」なんて真剣に問わないまま、ゆるゆる過ごしていこうよ。

 

 

宮部みゆき『理由』を読み終わりました。