8月2日の書庫

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井上真偽『恋と禁忌の述語論理』感想

 井上真偽さんの『恋と禁忌の術語論理』を読みました。

恋と禁忌の述語論理 (講談社文庫)

 

 井上真偽さんの著作は、こちらに次いで2作目です。

 

dorian91.hateblo.jp

  探偵ウエオロよりも数理論理学者の硯さんの話の方が私は好きかもしれません。「数理論理学」というのは初めて聞く言葉だったのですが、なんだか面白そう。独学で勉強するのはなかなか難しそうですが、勉強してみたい学問です。数学って学生時代苦手な教科だったけれど、ある時から「やればできる」教科として苦手意識が薄れた思い出があります。それに思考トレーニングというか、ゲームみたいだから。

 「動機を考慮しない」というのは、ありとあらゆる可能性を否定した『その可能性はすでに考えた』に通じるものがあるけれど、現代の刑事ドラマやサスペンスドラマは割と「動機」から犯人像を作り上げているのかもしれないなぁと思いました。犯行実行可能性と共に、動機で犯人を絞らないといけないからか。

 今回の話でも、面白いなぁと思ったのは犯行を実行できるかということと、容疑者の発言に問題がなかったかその妥当性を考えた結果を組み合わせた推理の仕方ということ。「事件を推理する」ということ、その行為自体がなんだか面白いなぁと思いました。1000年2000年前からきっと「裁判」というものはあったわけで、ううむ、今の私には、それらの行為で当たり前に「確からしい物」が分かると思っているけれど、果たしてそうなのか…よくわからなくなってきた、というところで思考が止まってしまいます。なんというか、本当にその人がやった、ということを当たり前のように判断できているけれど、本当に当たり前のことなのかなって。

 一般的なミステリとは異なる「数理論理学」という学問が入り込んだこの物語。刺激的な話だったと思います。

 

 井上真偽さんの『恋と禁忌の述語論理』を読み終わりました。