森博嗣「黒猫の三角」感想

森博嗣さんの「黒猫の三角」を読みました。

黒猫の三角 (講談社文庫)

 

森さんのGシリーズから始まり、瀬在丸紅子さんが主人公のVシリーズに手を出し始めました。他シリーズでも瀬在丸さんはお見掛けしていたので勝手にお年は40歳ぐらいかなと思っていたら、このシリーズ当時の年齢は30歳ほどだそうで。お若い。

 

Vシリーズの何が面白いのか。考えてみたのですが、事件でも謎解きでも登場人物のやりとりでもなく「瀬在丸紅子」という人物がその面白みの核なのだと思いました。とても気になる人物です。その思想も、没落した暮らしぶりも。

 

瀬在丸さんはこんなことを言っていました。

「殺したいか、それとも、個人を消したいか」紅子はすぐに答える。「殺人の動機は、この二種類しかない」

うわわわわ。とこの文章を読んで私は痺れました。確かにそうかもしれない。前者は「殺す」という行為そのものに意味があり、早い話、殺害する対象は誰でもいい。一方後者は個人を排除することが目的であり、「殺人」と言えばこちらの方がしっくりくる。なるほどね。

もっと言うと、後者に対しては「殺す以外の方法だってある」と言うことができるかもしれない。排除のための方法って何も殺害だけではないと思うのです。自分の中でその人を抹殺することもできるし、社会的な制裁を加えることもできるし、物理的に自分が離れることもできるし、誰かに相談することもできる。だけど、あえて「殺す」ことを選択する。手っ取り早いから。対して前者の理由で殺す人に対しては「殺す以外の方法がある」なんて提言は無意味でしかない。こちらとしてできることと言えば、そんな衝動というか欲望を持つ人なのかどうか、日々自分の周囲にいる人を観察し自衛していく他ないのではないか。でも、そういう欲望を持つ人には頭がいい人も多いと聞くので難しいのだろうなぁ…。

 

他に気になることと言えば、瀬在丸紅子さんの暮らしぶりと愛息へっくんとの関係でしょうか。なかなか厳しい暮らしぶりのようですが、優雅に生きていらっしゃるようだったので気になりました。どうやって生計を立てられているのだろう。またへっくんのフルネームも気になる。作中ではまだ明らかになっていない。なかなかあだ名として「へっくん」というのは珍しいような気もして。へっくんは大人びていて賢い男の子なのか、言動がクールだし、なんとなく紅子さんに冷たいような気がするのは、気のせいか。瀬在丸さんの家族風景が読み取れないのは仕方のないことなのかな。これからのお楽しみか。

 

ということで、楽しく詠むことができました。

真相は驚いた。冷静に考えればおかしなことはないのだけれど、つい誘導されてしまったな。

 

森博嗣さんの「黒猫の三角」を読み終わりました。

東野圭吾「ガリレオの苦悩」感想

東野圭吾さんの「ガリレオの苦悩」を読みました。

ガリレオの苦悩 (文春文庫)

 

学生時代から比較的長く、かつ、少しづつ本を読んできたけれど、実は東野さんの作品を読みとおすことができたのは初めてだった。東野さんの作品は多く映像化されているし今も継続して本を出されていることがなんとなくわかるし、有名な作家さんだと思う。なのに、今まで読めてこなかった。

大した理由はない。ただ、本を読むということはある種の「タイミング」のようなものが付きまとうような気がしている。本を手にするときはできるだけ「タイミング」に従うようにする。読みたいと思ったら読めばいいし、読まなくてもいいかなと思えば読まなくていいのだ。

 

そんなこんなんでたまたまた手にとった本書は、ドラマ「ガリレオ」として映像化された作品。ドラマを観てから原作を読むことになったので比較的違和感もなく、むしろ映像化のキャストってものすごく上手だったのでは?と思いながら読みました。

また、5編の短編で構成されている本ですが、5本中3本はドラマで見たことがある話でした(←もう2つの「密室る」「指標る」もドラマになってました)。こういうとき覚えているのはまず「トリック」なのだけど、特に、第二章「操作る」の話は演者さんまでよく覚えていました。

 

初めてガリレオシリーズを読んだわけですが、とても読みやすくさくさくと読むことができました。安定感がすごい。本によって重さや文体、内容が違うのは当たり前なのですが、やっぱりその違いは面白いなぁと思いました。この「さくさくと読める」というのも大事なのです。

 

例えば誰かを殺すとき、トリックを用いて捜査を攪乱するのは何故なのでしょうね。とふと思いました。殺すことが目的ではなく、殺した後に自分が刑務所に入らないで済むというところまで目的だからでしょうか。殺せば目的達成でいいじゃないか、とも思うし、「対象者を自分の人生に関係あるところから排除する」のあれば殺す以外にも方法はあるような気もして、しかし、殺すことが一番手っ取り早く、ある意味生物的な行動なのかもしれない。

ガリレオシリーズでは、結果的に偶然にも奇妙な殺人や現象が発生したケースと、犯人が意図して奇妙な状況を創作し事件が解決しないようにするケースの2つがあります。私が言っているのは後者についてですが、だから読みながら「手間暇かかっているなー」と思いました。

 

私も身に覚えがあるのであれですが、人間の衝動を前に理性というのはこうも封じ込められてしまうのか。理性とは衝動を前に無力なのか、と考えざるをえません。難しいですね色々と。

 

 

東野圭吾さんの「ガリレオの苦悩」を読み終わりました。

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