8月2日の書庫

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江國香織『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』感想

 江國香織さんの『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』を読みました。

 

泳ぐのに、安全でも適切でもありません (集英社文庫)

泳ぐのに、安全でも適切でもありません (集英社文庫)

 

  

 立て続けに江國香織作品。いつも同時並行で色々な本を読んでいるのですが、いつまで経っても読み終わらない本がある一方でスッと読めてしまう本もあるわけで、こういうことになります。

 この作品はタイトルがまず秀逸ですね。本当に素晴らしい。よくこんな題名が出る。そして短編集です。どれもそれぞれの良さがあり、強いて挙げるならば「りんご追分」が好きかな。

 ばらばらな短編を最後に江國さんのあとがきがバシッとまとめてしまうのも見事でした。単行本でこの本は読みましたけれど、文庫版にもあとがきはあるのでしょうか。ぜひ読んだ人の感想をうかがいたいです。コこの4ページをコピーして、そっと自分のバッグに忍ばせて持ち歩きたいくらい。多分この文章を書きあげたら実際に私はそうするでしょう。

 特に

瞬間の集積が時間であり、時間の集積が人生であるならば、私はやっぱり瞬間を信じたい。

 という言葉にゾクッとします。

 年末年始、一年が終わりまた新しい一年が始まる。浮ついた気持ちもありながら、一方で「また一年を生きねばならないのか」という、先が見えない道を前に早くもうんざりするこの気持ち。でも365日×1ではなくて、1日×365であるわけで、それはもっと分解することができるわけで。そうだな~そんな風に生きないとやっていけないよな~と、思いました。だからこの本を、今このタイミングで読めた喜びを、噛みしめたいです。