8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

綿矢りさ『しょうがの味は熱い』感想

 綿矢りささんの『しょうがの味は熱い』を読みました。

 

しょうがの味は熱い (文春文庫)

しょうがの味は熱い (文春文庫)

 

 

 小説って、面白い。そんな風に思いました。とにかく表現が瑞々しい。この物語の設定は物珍しい内容ではないと思うのですが(私の実体験としては無いけど)何故、こんなに、不思議なのだろう。どうしてこんな風に書けるのか。エンターテインメントとして、娯楽として楽しむ小説読みの一方で、人間の表現の限界に挑戦しているようにも思えるこの小説。終始読みながら「がーーーーーーーん」と頭の中で銅鑼が鳴っていた。頭が痛い。それだけ心動かされたということです。

 この小説の書き出し

 整頓せずにつめ込んできた憂鬱が扉の留め金の弱っている戸棚からなだれ落ちてくるのは、きまって夕方だ。

で銅鑼が鳴った。「整頓せずに」そう、憂鬱というのは概して自分でも整理がつかない感情の集合体。「扉の留め金の弱っている戸棚から」夕日差し込む自室なんかは本当に心細くなったりする。その雰囲気、わかる。わかる、この感情知っている。それが166ページにわたり続く小説です。そして表紙を見てぎょっとさせられるのも一興です。

 

 表現のすごさにどかーんとやられて物語の内容まで踏み込めないのですが、「そうかー」という感じ。自分事としては感じられないかも、今のところ。

男女それぞれの視点から描かれる現代の同棲物語 『しょうがの味は熱い』 (綿矢りさ 著) | インタビューほか - 文藝春秋BOOKS