8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

灰とワインレッド/エレン・フライス『エレンの日記』

 エレン・フライス『エレンの日記』を読みました。

エレンの日記

エレンの日記

 

 

 関係が無いのだけれど「エレンの日記」で調べると、ホラーゲーム『魔女の家』関連の本がヒットするのが面白い(私はまだ遊んだことがないゲームですし、多分今後も遊ぶ機会は無いと思います。怖いの苦手なので)。

 私はエレン・フライスという人物を知らないので、この日記が彼女とのファーストコンタクトになる。彼女の功績はテキストレベルで列挙されてはいるものの、雑誌を読んだこともなければそもそもファッションに疎いのでイメージが湧きづらい。「エレン・フライス」という人物を、私はこの日記を元に立ち上げるということになる。

 面白かった。人の日記は自分との差異ばかりで読んでいて非常に刺激的。しかし日記を連続して読むのは骨が折れる作業でもある。内容の良し悪し、共感の有無の問題ではなく、日記というものの性質のような気もする。読み手をどこまで意識するのかそのレベルも違うだろうし。

 興味深いのは、当時雑誌に掲載されていたものを20年近く経って本にまとめたという経緯である。20年!20年である。20年前のテキストを読む機会があるだろうか?私にはまだ無い。20年前の自分のテキストを読むというのは、一体当人にとってどんな感覚なのだろう。知りたいようで知りたくない。(が、私は一応ブログのテキストは手元に控えているので、このままdeleteしなければ、そして私が生き永らえていれば、この文章も読むことができるかもしれない)そういう意味ではあとがきが印象的だった。人生、どうなるかは誰にもわからない。

 

 この文章のタイトルは、私がこの本を手に取ったときの印象だ。モノクロな表紙の雰囲気、栞の紐のワインレッドの色は、口紅の色を彷彿とさせる。本を手に取るというのはテキストを読むだけではない、ある種の体験である。この本を手にとれて良かった。事あるごとに読み直せたらいい。自分の現在と日記の彼女を照らし合わせながら。