8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

中村安希『インパラの朝』感想

 中村安希さんの『インパラの朝』を読みました。

 

インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸 684日

インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸 684日

 

 

 わからなかった。彼女は684日間、47か国を旅し、私は極東の島国で毎日毎日デスクワークに勤しんでいる。わからない。スラム街の匂いも、ジャムの美味しさも、夜明けの美しさも、サバンナの朝も、知らない。

 「知りたいのか?」と問われると、私は「知りたい!」と答えるだろう。そしてそのあとに必ず付け加える、「でも…」なんとも弱気な回答だ。

 この本はある年の青少年読書感想文コンクールの課題図書だったと記憶している。当時は読まなかったし、私は課題図書の感想文を書いたこともなかった気がするが、ということは多くの学生がこの本を読んだということだ。私は他人の読書感想文を読むのは好きであるけれど、この本に限っては「好き」という以上に「この本を読んだ人はどんなことを考えたのだろう」という好奇心が勝る。だからこの文章を書き終わったら、他の人の感想を読んでみようと思っている。

 

 冒頭の数ページが好きだ。ビビビン!ときて、これはあとでノートに書き写しておきたいという文章。26歳、冷蔵庫を売る。

 途中の内容はあまり記憶がない。結構流し読みしてしまった気がする。ただ玉ネギのところは特に印象的だ。パキスタン[10年の約束]。そうだ、このように「あなたはどこの国の話が好き?」と言い合うのも面白い本だと思う。各国数ページで終わりとにかくテンポが速い。紀行文は思考が分断されないというか、比較的時間が続いている感覚を受けるのだけれど、『インパラの朝』に限ってはむしろ「分断」がポイントであって、旅の道中の一コマを延々と見せられているかのよう。これはなかなか新しいスタイルというか、様々な場所に行ったからということだと思う。

 この本を読んでも私は世界旅行はしないわけで、では私はどうなる?ということを読み終わってから繰り返し考えている。私はこの本を読んで、どう思った?そして、わからなかった。

 

 「世界を知っている」なんておこがましいということ。あとは想像と実感が必要ということ。それぐらいしか。

 

 だから知りたい。この本を読んで、他の人はどう思ったのだろう?