8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

朝井リョウ『どうしても生きてる』感想

 朝井リョウさんの『どうしても生きてる』を読みました。

どうしても生きてる (幻冬舎単行本)

 

 朝井さんの本はこれまでもたくさん読んできて、学生時代に初めて知った作家さんだけれど、ああ、どんどん読後感が変わってきているなと感じます。私が変わった部分もあるだろうし、朝井さんの取り上げるテーマも変わっているからだろうと思います。でも本質的な部分は変わってない。

 読み進めるのがつらいです。しんどい、しんどいと思いながらページをめくるけれど決して「読みたくない」にはならない。そこが私が朝井さんの作品を読むうえで面白いなと思っているところだし、同じ感想を抱く人もいれば抱かない人もいることはわかります。

 どうしてつらいのかというと、私が普段気づいていたり知っているけれどあえて言語化してないことが、言葉として表現されているからです。そしてそれらの多くは残酷です。残酷で見たくない、理解したくないと避けていることが容赦なく登場してくる。そこで私は自分の狡猾さと対峙せざるをえないし、誰かから横っ面をはたかれるような感覚を味わいます。ばつが悪いです。

 一番好きな短編が『籤』、あとは『健やかな論理』でした。本当にきつかった。でも、いいなぁと思ったところがあって、どの話も「生きる」ことが前提とされていたところ。どうしても生きてる話であることが嬉しかった。みんな生きることの話をしていたのが心強かったです。