8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

新装版『亡命ロシア料理』感想

 ピョートル・ワイリ、アレクサンドル・ゲニスの『新装版 亡命ロシア料理』を読みました。

亡命ロシア料理

 

 完全にタイトルとジャケット買いです。2020年くらいに買っていたのですが積読状態でした(何故買った時期がわかるのかって、私は本を買ったときはレシートをページのあいだに挟むのが習慣だからです)。昨今の世界情勢も相まって「これ逃したらいつ読むのよ?」と思って読み始めました。

 積読になっていた理由とも関連しますが、読んだとて内容をまるで覚えていないという感想になります。なんというか、それは面白くなかった、買わなければよかったというわけではなく、単純に文章との相性かと思います。この本の特徴として、料理エッセイであり文明批評でありながら、かなり具体的に調理レシピが記載されています。しかも、普通のテキストで調理手順や材料を語るわけです。頭に入ってこないのです、びっくりするくらいに。食材も亡命ロシア料理独特のもので、日本で生きているとどうもイメージしづらい食材もある。想像しながら読もうにもよくわからないから、空白地帯を歩いているような途方もなさを感じました。それはそれで面白かったですけれど。

 批評については手厳しいです。ロシアとアメリカという二つの大国に挟まれ引き裂かれながら皮肉っぽく懐かしみを交えながら語る望郷の味。豊かな言葉がそこにはあります。それと料理への情熱ですね。

 新装版に際して従来のに追加された訳者あとがきはぜひ読んでほしい。かなり胸に迫ってくる文です。本当に。ウクライナの人々に思い馳せ、またロシアで生きる人々のことも考えます。願うことは無力かもしれないけれど、願わずにはいられない。双方の文化が共存できることを願います。