8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

佐岸左岸『オールドファッションカップケーキ』感想

 佐岸左岸『オールドファッションカップケーキ』を読みました。

オールドファッションカップケーキ (HertZ&CRAFT)

 

 線が綺麗だなと思ったので読んでみました。恋愛漫画は普段は読まないのだけれど、たまには読んでみるかと「月一漫画プロジェクト(月に1冊漫画を読んでみる)」の一環。

 いわゆるBL作品をどういう気持ちで読めばいいのかよくわからないです。BLというジャンルを特別視するつもりはないけれど、それは妥当な判断なのか。どう楽しんでいいのか(そもそも楽しんでいいのか)というところから私にはわからないのです。だから、ただ線が綺麗でパンケーキが楽しそうで、野末さん(髪が茶色でふわふわしている方)の馬鹿野郎と思いながら読んでました。食べるときにもきゅもきゅリスみたいに飯を食ってる外川も可愛かったな。

 私は野末さんのことが嫌いではないけれど、その鈍感さは悪では? と思ってしまったところがあり、自分(私)のことが嫌になってしまったのが面白かった。野末さん、気づけよ!でもそんなに早く気づいたら漫画は10Pくらいで終わってしまうでしょう。人の無知は、無関心は、愚鈍さは、物語を生み出す。

 年齢というのもひとつのキーワードでした。。恋愛という文脈に限らず、40歳になる男がパンケーキ食べるの? みたいなのは考えさせられた。私は一人で二郎系のラーメン食べに行くけどそれは誰の為でもなく私の為に食べるんだよ!それでいいじゃないか、とはすっぱり言い切れない気持ち悪さが残って、ふざけるな、社会の馬鹿野郎が、とか思ったりして感情が忙しない。ジェンダーへの固定概念はまだまだ消えない。「〜らしさ」みたいなものを現時点で私は否定はしないが(基準があることで差異が生まれ、その基準というものに絶対性はない)考えさせられました。外川は野末さんと一緒でなければパンケーキ屋に行かないのかなとは思った。元々外川がそういう「〜らしさ」について柔らかな考えを持っていたのか、「野末さんとだから行く」のかは、ちょっと判断がつかないなあ。どちらでもよろしい。

 日々自分のジェンダーセクシャリティについて考えています。考える度に新しい発見があってそういう機会を得られて良かったな、楽しいなとすら思います(もちろん日々懊悩している人もいるでしょうけど)。だから、当たり前のように恋愛する人にも、もっともっと繊細であってほしいというのは私の勝手な願いで。何故ならいまいちわからないからそれがどんなものなのか教えてほしいのです。この作品は心情の変化や葛藤が丁寧に描かれてると思ったけど、恋愛への解像度は個人に属するものでもうちょっと細かく語ってほしいな、なんてことを考えてしまいました。もっともっと細かく描かれている恋愛作品があれば教えてください。私は読む。