8月2日の書庫

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津村記久子『浮遊霊ブラジル』感想

 津村記久子さんの『浮遊霊ブラジル』を読みました。

浮遊霊ブラジル

 

 津村さんの話が好きだ、と感じる。そんな短編集だった。

 津村さんの話、そこまで読んでいない。片手で数えられるほどか。でもこれからはもっと読んでみよう。多分学生の頃では感じえなかった世界があるから。私はその世界に足を踏み入れているのだから。

 特にコルネさんの話に震えた。なんて美しい話なのだろうかと。説明されすぎず、どうしてこのように書くことができるのだろうか。うどん屋の店主の絶妙な描かれっぷりに唸るし。ポイントは「嫌すぎない」というところだ。多分このうどん屋店主の振る舞いを気にしない人もいる。何故コルネさんは嘘をついたのか、わからない人もいるだろう。でもわかる人には本当に身につまされる話だと思う。コルネさん嘘をつきながらも、何度もうどんを食べに来たんだね。それぐらいこのお店のうどんが美味しくて(本当に美味しそうな書かれっぷり)そして、うどんしか食べたくないと思うぐらいに毎日擦り減らされているのだ。

 ユーモアと日常と不思議。それらがミックスされ独特の読後感になるのか津村作品の特徴の一つと言える。日常は大変だけど、面白くないものでもない。そしてやっぱり大変だ。