8月2日の書庫

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金原ひとみ『パリの砂漠、東京の蜃気楼』感想

 金原ひとみさんの『パリの砂漠、東京の蜃気楼』を読みました。

 

パリの砂漠、東京の蜃気楼 (ホーム社)

 

 「めちゃめちゃ良い」という言葉を使うことが躊躇われる。でも、めちゃめちゃ良かったのだ。何が良かったか?そんなの知らない。

 夢中で読んだ。著者の様々な感情が文章からひしひしと伝わってくる。私と同じ、私とは違う、そんなの関係ない。そこにある生々しい生の気配に私はただただ圧倒されながら読んだ。人はこれほどのことが書ける。いや、逆か。これほどのことを書きだしてしまえる人がいるということ。著者にとって書くことは生きることに欠かすことのできない、ぺったりと生に張り付いた営みなのだろうと思いました。

 今年はいわゆる異国と自分の国を横断する人、両国の挟間で生きる人の本を手に取ってしまう年のようで、金原さんの『パリの砂漠、東京の蜃気楼』もそのカテゴリに入れることはできると思う。日本とフランス。異なる国を捉えたエッセイ。しかし同じカテゴリに括ることはできるとはいえ、内情は様々だと感じた。私は異国への憧れと恐れを天秤にかけると後者の方が勝ってしまう人間なのだが、初めて外国へ行きたいと思った。

 あと装丁がやっぱり好きだ。目次がパリと東京それぞれ分かれていて、フレンチのコース料理のメニューみたいになっている(知人の結婚式場でこんな紙が円卓の上に置いてあるのを見た)。パリ編は章の名前がカタカナで意味がわからないものも多いのだけれど(なにせフランス語なので)東京編になると、全部知っている言葉が並んでいるのが面白かったな。