8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

村上春樹『国境の南、太陽の西』感想

 村上春樹国境の南、太陽の西』を読みました。

国境の南、太陽の西 (講談社文庫)

 この作品は『ねじまき鳥クロニクル』から切り離された物語だと、どこかで読んだ。その事前情報を踏まえて読むと、確かに「ここはあの部分だな」と思える箇所がいくつもあり、それは独特な感覚だったと思う。まるきり違う話であるのに、どこか通じる部分があるという奇妙さ。

 この本を読んで思ったのは、人生というのは出会う人間を通過していくことなのだ、ということで、具体的に言うと、僕である始が高校生(だったか?)のときに出会うガールフレンド、イズミである。私は始がイズミとイズミの従姉にしたことについてとやかく言うつもりはないのだが、残酷だなあと思ったのはその出来事の後の扱い方だった。その出来事は始に大きな影響を与え、彼自身もとてもショックを受けたと書かれているが、その重みを私は上手く掬えていないのかもしれない。端的な話、イズミに対して冷淡すぎやしないか、そりゃああんまりだよ、ということを私は言いたい。始はイズミを通過していった。彼女は現在進行形で始に影響しているけども、一方で彼女は過去の人ではないのかということ。その「過去の人」というところに、私は冷酷さを感じたのだろうと思う。でも、別にこれはこの小説の主人公だけでなく、私も他の人もそうで、過去の人は過去の人になるのであり、それって仕方ないけど寂しいことだよね、ということを思った。村上作品の主人公は、よく過去に囚われているなあと思うけど、囚われながらもその距離は遠い気がしてならない。他の物語だともっと生々しい距離にあって囚われているのに。それが不思議な感覚を醸成している気がする。