8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

ライマン・フランク・ボウム『オズの魔法使い』感想

 ライマン・フランク・ボウム『オズの魔法使い』を江國香織訳で読みました。

オズの魔法使い (小学館文庫)

 

 児童文学のジャンルだろうけど、面白く読めた。幼心に、北と南に善い魔女がいるならば、どうして東と西の魔女を倒さないのだろうと思っていたのだけれど、考えた結果、以下の二点かなあと思う。

  1. 善い魔女には悪い魔女を倒す力がない(悪い魔女の方が強い)
  2. オズの国には内政不干渉の原則がある

 前者については、そもそも「何かを討つ」という行為はまったく善良な人間にはできない説。後者については、ドロシーという、その世界の摂理の外にいてどの国にも属していない流れ者だからこそ国を横断し悪い魔女を討てた説。ファンタジーは脈々と受け継がれるエッセンスみたいなものがあるジャンルなので、『千と千尋の神隠し』はかなり頭に浮かんだ。外からやってきて、再び出ていく少女の物語。不思議の国のアリスもそうなのだけど。いや、ファンタジーというのは、主人公が世界の内側にいる人間か外側にいる人間か、この二択は絶対発生してしまうか…。

 西の魔女を殺しなさい、と言われたときに、自分はこれまで意図的に人を殺めたことはないし、願いをかなえるためとはいえ、誰も殺したくない、と言ったドロシーを読んで、この物語は信頼できると思ってしまった。その辺りはっきり主張するのって大事だけど曖昧な作品も多い。