夏目漱石の『こころ』を読みました。
私は本をほどほどに読む人間だけれど、いわゆる近代文学はほとんど読んでこなかった人間です。このことは微妙にコンプレックスであり、ではそこに何があるのだろう?と考えたいところではあるんですけれど、先日芥川を読んで結構面白かったので、夏目漱石の『こころ』にも手を伸ばしてみることにしました。
高校の教科書にも収録されていたと記憶していて、授業でも扱われたと思っています。確か終盤の方を抜きだしていて、今回読み直したときにその部分に差し掛かると当時のことをふと思い出しました。
初めに書いておくと、私はもう一度この本を読み直さなければなりません。今は読み直す気はないですが、近い将来必ず。というのも、序盤は自分の割には丁寧に文章を拾いながら楽しんで読んでいたのですが、後半に差し掛かるとその先が気になってしまい(結末がわかっているというのに)するする読んでしまったので。それぐらい、話としても引き込まれる面白い作品でした。
『こころ』がすごいのは、やっぱり先生の心中の描写だと思います。Kとお嬢さんの間で絶えず揺れる心。やることなすこと悪手でどんどん自分の首を絞めていくのに、そこから逃れられない弱さ(弱さ、なのかなぁ)。先生とまるっきり同じ立場に立たされたことはないですけれど、この自分で自分の首を絞めていく感覚は見覚えがありますし、その時の息苦しさや絶望感、無力感、羞恥心は近いものを感じるので、読んでいて心の中でわあわあ叫んでしまいました。しんどい。
そして『こころ』ってのは構成も面白いと思います。目次を見る限り、私と家族の話は必要なのかなぁとも思ったりするのですが、必要ではあるよな、と考え直したり。私が何故先生という人間に魅かれるのか、ってのもまだまだ考察が必要だなと思いました。そりゃあ、人間が人間に魅かれる理由なんて明確に存在しないし言語化できないかもしれないですけど。物語を読み終えて、先生と私の最初の出会いに立ち戻る時、それが人で賑わう海水浴場ってのが、物語全般の印象とは少しズレているのも興味深いです。何故海水浴場なのだろう…太陽が燦燦ときらめき、海が輝く海水浴場…?
ということで、『こころ』面白かったです。『こころ』について考察した本も読んでみてもいいかもしれないです。