8月2日の書庫

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小野不由美『白銀の墟 玄の月(一)』感想

 小野不由美先生の『白銀の墟 玄の月(一)』を再読しました。

白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫)

 

 今から何年前でしょう、7,8年前になるのでしょうか、十二国記シリーズの存在を知ったのは。そこから少しずつ読み始めて読み返し、リアルタイムで新刊を手に取れるのはなんと初めて!!!嬉しい!!!ということで2019年めっちゃわくわくしました。一度読んではいたのですが、もう一度丁寧にゆっくり読み直したいなと思い『白銀の墟 玄の月』を読んでいます。ここからまた他の本も読み直したいと思っています。

 

 とにかく苦しい苦しい立ち上がり。李斎と泰麒は驍宗という希望を見失ってはいませんが、正直読んでいて「いやいや本当に大丈夫なのかよ…」とその生死を疑うぐらい、先行きが不透明です。読んでいてしんどいです。王が崩御する際に落ちる白雉がまだ落ちていない!という根拠がありながら、それを信じることができない自分がいて、天の摂理に対する全幅の信頼という十二国記の考え方に染まり切れていない感じが面白いです。

 驍宗捜索隊は、武官ゆえか彼女の気質か、勇猛果敢で突破力がある李斎と、そこからこぼれる細かなところをカバーする神農の鄷都の細やかさと物腰穏やかなところ、そして素直で率直な去思の組み合わせ、立場も仕事もバラバラな三人が今のところ調和を保って旅をしていく様がいいなと思いました。鄷都、めちゃめちゃ良い人。

 民視点の部分は「もう自分は死んでもいいけど後世に生きる人が健やかに暮らせる世であってほしい」と願いながら死を待つ人の描写に心打たれました。「もう死んでもいい」って民に思わせる国って一体…第一巻の段階では阿選が完全に国を放置していてその様が本当に憎くて仕方がない。徹底的苛烈に誅伐しまくるのも許しがたいですが、なんというか歴代の王って「誅伐」とかとにかくなんらかの行動には走っていてそこからその人の思惑がわかるものですが、阿選は確かに抗う人々への弾圧はあってその内容も酷いですが、それ以外は本当に何もしないので、何がしたいのかわからんのですよね…。

 そういう意味で、驍宗の行方がわからない!阿選は何がしたいのかわからない!泰麒の目論見はわかるけど阿選が王って本当なの…?という、わからないのオンパレードの中いかに進むかということが問われる物語です。多分『白銀~』という物語の一つのテーマはこれかと。先が見えない世界をどのようにして切り拓くのか。

 この点を踏まえた上で二巻以降も読んでいきたいと思います。