8月2日の書庫

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恩田陸『ネバーランド』感想

 恩田陸さんの『ネバーランド』を読みました。

ネバーランド (集英社文庫)

 

 昔読んだはずなのだけれど、結末をおぼえられていない。ということで楽しく読むことができました。「ネバーランド」というタイトルもなるほどね、と。

 恩田さんは閉じられた世界を描くのも上手い、というよりも、それがキーワードである作家さんだなと思います。『麦の海に浮かぶ果実』『夜のピクニック』『六番目の小夜子』『球形の季節』。数を挙げればきりがありません。閉じられた世界で生きる人々、その人々の閉じられた世界。世界と、そこで生きる人の心が閉じられている感覚です。その「閉じられている」というのを私は「内向的」「内省的」と捉えているのですがどうなのでしょうね。

 閉じられた空間で、自我が肥大化し他者への憎悪が育まれる一方で、この『ネバーランド』という作品は他者への興味関心、理解に繋がっていくところが素敵だなと思いました。

 

 恩田作品の会話でむしょうに好きになる言葉ってのがひとつやふたつあるけども、『ネバーランド』ならこれだな。ああ、ベーコンエッグが食べたい。

「とっとと食え。俺、ベーコンの脂が皿の上で固まっているのって、この世で絶対許せないもののひとつなんだ」(p.54)