本谷有希子『異類婚姻譚』感想

本谷有希子さんの『異類婚姻譚』を読みました。

異類婚姻譚

 

ゆるゆると本をここまで読んで来て、本にまつわる「賞」があることも知っている。

何か賞を取ったから、という理由で本を手にとることもあるし、いいなぁ話題になっているし、と思って手にとった本が何かの賞を取っていることもある。

私は芥川賞より直木賞を受賞する作品を読むことが多い。芥川賞、難しい。直木賞はエンターテインメントだなと思っているところがあるが(個人的感想です。読みやすい作品が多い)芥川賞は、小説の可能性を感じる。こういう表現の仕方があるんだな...という発見を味わえる。感性がすごい。あんまり受賞作を読んだことがないけれど、そこから感じる勝手な印象でした。

 

そんなわけで、この『異類婚姻譚』も芥川賞を受賞した作品です。

 

この作品は、凄いなと思いました。

表題作「異類婚姻譚」がページの半数以上を占めていることもあり、異なる人間が夫婦になり共に生きること、に注目されるような気もしますが、私自身が結婚に無関心であることもあり、私はこれを「結婚」「夫婦」の物語とは読みませんでした。では私は何を考えていたのか。

私はこの本を「それでも選んだ人」の物語、と捉えました。

 

何がそれでもなのか。

 

普通、頑張ると思うのです。一念発起して自分や人生を変えてやるんだ!という展開の物語をたくさん読んで見てきました。それが普通なのかなと思うのです。

現状がある。何かが起こる。それをきっかけに人生が動き出す。前向きに。ある種のパターン。好転ではなく、どんどん事態が悪化して最終的にどん底、みたいな流れもある。

でも『異類婚姻譚』の表題作含む4つの物語の主人公は、変わらないことを選んだような気がするのです。私はその選択にすっきりしない。すごく不安になる。あなたはそれでいいのか…と読みながら何度も思ってしまいました。そして「あなたはそれでいいのか…」ってなんで私は思うのだろう?ということを考えたのです。この感想は、良い。なんで私はこの物語の主人公に感情移入できないのだろう。なんでだろう。これが、小説の醍醐味。

 

難しい。

もっと年を重ねれば感想が変わるだろうか。そんな気がしました。

 

ぼんやりとした読後感だからこそ、誰かと感想を共有し合いたい。そういう小説でした。

 

最後に私がドキッとしたフレーズを書いて終わりにします。

コンロの火を弱火にしていたトモ子は、この世界が途中で消されてしまうクイズ番組だということを、突然理解した。

この文章で、私は言葉の可能性をドカンと感じました。表現って面白い。こういう言葉に、生きている限りたくさん出会いたい。

 

 

本谷有希子さんの『異類婚姻譚』を読み終わりました。