8月2日の書庫

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アガサ・クリスティー『象は忘れない』感想

 アガサ・クリスティーの『象は忘れない』を読みました。

象は忘れない (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

 

 面白かったんだが!?!?

(以降ネタバレあります)

 

 

 

 

 

 

 『象は忘れない』が面白いだなんて、結局私はメロドラマが好きなのかしら、と思わなくもないけれど、え~、これはめちゃめちゃ愛の物語じゃーんと、きゃーきゃーしてしまうのだから仕方がない。とはいえ、この物語は愛の物語であり悲劇なのだから「きゃーきゃー」はどうなのかと思うが。

 この話は「過去になにがあったのか」という未解決の謎を解決しようとする話でして、作中にも登場するように『五匹の子豚』を似ています。異なるのは、五匹の子豚(=真犯人?かもしれない事件の関係者)ではなく、もっと遠い「象」の話をとにかく聞かなければならないという点。つまり、話自体、語り手の主観が濃く正しいとも言えるし正しくないとも言える情報から真実を見つけてこなければならないという点。がちゃがちゃしています。ポアロもミセズ・オリヴァも色々な人に話を聞きに行きます。

 

dorian91.hateblo.jp

 

 ポアロは未来ある若者たちに優しいなと思います。そこがポアロの魅力の一つかと。一卵性双生児のモリ―とドリーとレイブンズクロフト将軍が「本当は」どう思っていたか、生きている人たちは知ることは永遠に知ることはできないよな…つまりポアロや当時の家庭教師の人たちが語る真相が限りなく真相に近い真相であることは間違いないけれど、本当に亡くなった人たちがどんなことを思っていたかなんて知ることはできないし、いや、それって死んでしまった人に限らず、相対する目の前の生者も同様なのだなと思います。人が本当に考えていることなんて、自分含めてわからないものですよ。