8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

アガサ・クリスティー『ゼロ時間へ』感想

 アガサ・クリスティー『ゼロ時間へ』を読みました。

ゼロ時間へ (クリスティー文庫)

 

 2020年は江國香織の年であり、アガサ・クリスティーの年でもある。そしてそれは何もなければ2021年へと続いていくだろう、というのは私の読書予定です。またクリスティーの小説を読みました。

 

 以下の内容はネタバレになってしまうのでご注意を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ゼロ時間=殺人が達成される瞬間」という考え方に惹かれました。大体ミステリというものは、犯行が行われた後が大事になってくるわけですが、この本は構造を少しばかり工夫することで、ゼロ時間に向かっていく過程を綴ることができています。面白いですね…。だって、普通は殺人の事後なんですもんね。あーだこーだと登場人物たちの秘密が明らかになっていきます。ネヴィルというテニスプレイヤーとその前妻、後妻とそれらの養母やら友人たちやら親戚やらが集まった緊張感ある空間。ひりひりしました。前妻のオードリィがそれはミステリアスな人物として描かれているのが面白さを加速しています。オードリィ、怪しすぎた。そして劇中の「殺人」が単なる踏み台になってしまうのが、死者に対するこの上ない冒瀆だな、とも思いました。まあそういう犯人なんですけど…。