8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

小川洋子『遠慮深いうたた寝』感想

 小川洋子さんの『遠慮深いうたた寝』を読みました。

遠慮深いうたた寝

 この本はまず装丁が素晴らしい。書店に平積みになっていたときから密かに気になっていた本をようやく読むことができました。陶磁器を撮ったものを印刷した表紙、なのでしょうか。この表紙を開くときは、陶磁器のあの触感、音を思い浮かべることになりました。

 エッセイも面白かったなあ。何が?というとうまくは言えないですが。

 小川さんの作品に通底している雰囲気を読者は常々感じると思うけれども、ああ、そういうことなんだなあ、という納得感が読んでいてありました。耳を澄まして書くということ。声を聞くということ。

 小川さんに限らず、人のエッセイを読む時に「どうして自分にはそれがないのだろう(起こらなかったのだろう)」ということを考えます。もちろん私にも固有の何かがあって、他の人にもある。面白いエッセイとは何なのか。「何が」面白いのか、私にはまだわかっていないところがあります。私が読んでいて感じる「面白い」というのは、着想とか視点じゃない気がする。エピソードの面白さがエッセイの面白さではない、と思う。

 また、エッセイ集というのは、どこかで掲載していたものを集めることも多いので、連続して読むと「ムラ」のようなものを感じるもの。別の面白さ。時代や時期、書き手の状況の違いが文章の感じに表れている。その微妙な違いは、同じ作家のたくさんのエッセイを並べないと見えてこないので、エッセイ集の醍醐味と言えそう。