8月2日の書庫

本の感想を書くブログです。

か行の作家

小林聡美『聡乃学習』感想

小林聡美『聡乃学習』を読みました。 エッセイを立て続けに読んでいると、当たり前ながら文体がそれぞれ異なることが不思議でならない。同じであることがあり得ないのにもかかわらず、これほどまでに文体が違うことに違和感を感じてしまう。その文体、どこか…

キム・ハナ、ファン・ソヌ『女ふたり、暮らしています。』感想

キム・ハナ、ファン・ソヌ『女ふたり、暮らしています。』を読みました。 年末から読み始めていたのでどうにか2022年内に読み終えたかったところではあるけれど(というのも、そうすると2022年に読んでよかった本に挙げることができるから)ようやく読み終え…

アガサ・クリスティー『三幕の殺人』感想

アガサ・クリスティー『三幕の殺人』を読みました。 犯人については言及しないけれど、動機に関する感想を書くので各自回れ右お願いします。 実際に起こった事件に対するコメントで「誰でもよかったという動機は、ある意味で二重の殺人であると言える。つま…

アガサ・クリスティ―『蒼ざめた馬』感想

アガサ・クリスティ―『蒼ざめた馬』を読みました。 はい、騙されました。クリスティのミステリで犯人を当てられた試しがないのだけれど…それは読者としては優良なのでしょうが、当てたくなくて当てられないわけではないから悔しいです。 人を呪術で殺すこと…

アガサ・クリスティー『死の猟犬』

アガサ・クリスティの『死の猟犬』を読みました。 短編集。率直な感想を書けば「クリスティ、こんな話も書けるのか」と思いました。じわじわと少しずつ圧迫感を強めてくるのは『そして誰もいなくなった』でおなじみ、かの作品が好きな人は好きになれる話も多…

アガサ・クリスティー『象は忘れない』感想

アガサ・クリスティーの『象は忘れない』を読みました。 面白かったんだが!?!? (以降ネタバレあります) 『象は忘れない』が面白いだなんて、結局私はメロドラマが好きなのかしら、と思わなくもないけれど、え~、これはめちゃめちゃ愛の物語じゃーんと…

新装版『亡命ロシア料理』感想

ピョートル・ワイリ、アレクサンドル・ゲニスの『新装版 亡命ロシア料理』を読みました。 完全にタイトルとジャケット買いです。2020年くらいに買っていたのですが積読状態でした(何故買った時期がわかるのかって、私は本を買ったときはレシートをページの…

アガサ・クリスティー『鳩のなかの猫』感想

アガサ・クリスティーの『鳩のなかの猫』を読みました。 ※ネタバレあるかも 英国でも有数のメドウバンク校にも事件の影は忍び寄っていた。新任の体育教師が何者かに射殺されたのだ。犯人は学内に潜んでいるに違いない・・・・・・そう鳩を狙う猫のように! …

角田光代『口紅のとき』感想

角田光代『口紅のとき』を読みました。 使わないけれど化粧品を眺めるのは好きだ。美を彩るものだからか、化粧品のパッケージはどれも可愛い。モノとして「キュン」となる感覚がある。 口紅も同様で、ああ、私も一本や二本持ち歩けばいいのに…と思うのだけれ…

アガサ・クリスティー『青列車の秘密』感想

アガサ・クリスティー『青列車の秘密』を読みました。 いや~面白かったです。クリスティー作品は少しずつ読んでいるけれど、その中でもかなり好きな部類に入る作品ではないでしょうか。個人差はありますし、この作品が「THE クリスティー作品」と呼ばれてい…

春日武彦, 穂村弘, ニコ・ニコルソン『ネコは言っている、ここで死ぬ定めではないと』感想

春日武彦, 穂村弘, ニコ・ニコルソン『ネコは言っている、ここで死ぬ定めではないと』を読みました。 医者・作家の春日さんと歌人の穂村さんの死をめぐる対談集。そして挿絵として漫画やイラストをニコルソンさんが担当している。絵が可愛い。お二方(春日、…

『暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて: ル=グウィンのエッセイ』感想

『暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて: ル=グウィンのエッセイ』を読みました。 ああ、なるほど。この手があったか。私にもできるかしら? 試しにやってみようか?(p.14) 書店で見かけて気になっていた本でした。まずタイトルが素晴らしいなと…

クラフト・エヴィング商會『おかしな本棚』

クラフト・エヴィング商會の『おかしな本棚』を読みました。 本を読む。それは個人的なこと。誰かが本を読む。それは怖いこと。 そんな言葉が思い浮かんだ。 WISDOM 知恵授けるTeach1見境いない善悪のBig Bangつまりそれは小さな教室から無限広がる叡智の羅…

アガサ・クリスティー『雲をつかむ死』感想

アガサ・クリスティーの『雲をつかむ死』を読みました。 クリスティーは面白くない作品があまり無いなあ、、、と読んでいて本当に思います。 この『雲をつかむ死』も然りで、ミステリーとして先が気になるという面白さもさることながら、人物描写が見事で。…

アガサ・クリスティー『スリーピング・マーダー』感想

アガサ・クリスティーの『スリーピング・マーダー』を読みました。 ※ネタバレありです 最初に言っておきたいのですが、新婚グエンダの旦那さんが犯人じゃなくて良かった!本当に良かった!最悪、それだけ言えればいいです!でも感想を続けます。 やっぱり犯…

アガサ・クリスティー『白昼の悪魔』感想

アガサ・クリスティーの『白昼の悪魔』を読みました。 クリスティーの「やり口」はわかっているんだ。まだまだ読み切れてないがそれでもクリスティー作品を読んできたのだから。でも、犯人がわからない。当たらない。結末に驚く。読者としては「良い」読者か…

アガサ・クリスティー『終りなき世に生れつく』

アガサ・クリスティーの『終りなき世に生れつく』を読みました。 人が死ぬことはわかっている。が、なかなか死なない。その「なかなか死なない(≒ 事件が起きない)」がポイントだったのだなと気が付いたのは読み終わった後。この本を読んだことがない人が、…

アガサ・クリスティー『春にして君を離れ』感想

アガサ・クリスティーの『春にして君を離れ』を読みました。 正確にはアガサ・クリスティーとは別の名義で公開された作品らしいので「アガサ・クリスティーの」と言うのは憚られる気もしますが、とにかく読みました。 この本を読み終わって最初に感じたのは…

『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』感想

アマル・エル=モフタール、マックス・グラッドストーンの『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』を読みました。 いや~~~~~。面白かった。とても刺激的でした。 タイムスリップしあらゆる領域の出来事を自分たちの陣営にとって都合がいいように改変し…

アガサ・クリスティー『魔術の殺人』感想

アガサ・クリスティーの『魔術の殺人』を読みました。 今回はミス・マープルの元同窓であるキャリィ・ルイス・セロゴールドに参りました、という作品。なんだろう、彼女の人物描写、どこか既視感…と思ったら、小野不由美「十二国記」シリーズの采王・黄姑で…

アガサ・クリスティー『邪悪の家』感想

アガサ・クリスティーの『邪悪の家』を読みました。 「邪悪な」家ではなく、「邪悪の」家であるところが面白いと思いました。この家に愛着を持つニック、薄気味悪さを感じている使用人。なんでしょう、何かを所有することに執着する人の業、という気もしまし…

アガサ・クリスティー『葬儀を終えて』感想

アガサ・クリスティー『葬儀を終えて』を読みました。 個人的クリスティー作品TOP5に入りそうな作品です。とにかく登場人物が多いのですが、多少わからなくても読み進めることをおすすめします。そのうち嫌でも覚えますから。 甥とか姪とか従姉妹とか、この…

アガサ・クリスティー『死との約束』感想

アガサ・クリスティーの『死との約束』を読みました。 先日、三谷幸喜の脚本でドラマ化された作品。面白かったのでぜひ原作を読みたいと思い手に取りました。 こちらも面白かったですね。クリスティーは人間の集団における感情の機微を描くのが本当にうまい…

アガサ・クリスティー『スタイルズ荘の怪事件』感想

アガサ・クリスティーの『スタイルズ荘の怪事件』を読みました。 ※ちなみに私は田村隆一訳を読んでおります。 ※そしてネタばれを含んでいるのでご注意願います。 読みました。面白かったな。クリスティー、とりあえず10冊以上は読んだのだからいい加減犯人が…

アガサ・クリスティー『五匹の子豚』感想

アガサ・クリスティーの『五匹の子豚』を読みました。 今から16年前の私って、何歳だ? そう考えたとき、この物語のすごさを再認識する。私は16年前の私と出来事を思い出すことができるかしら。 とても面白かったです。傑作だとかそういう話を聞くのもとても…

角田光代『彼女のこんだて帖』感想

角田光代さんの『彼女のこんだて帖』を読みました。 いいですね。食べることがある。ただそれだけ。上手とか下手とかそんなこと、どうだっていい。人が食べることにハッとしたきらめき抱いた瞬間を捉えた作品だと思います。毎日作る必要なんてない。でも、ず…

アガサ・クリスティー『ABC殺人事件』感想

アガサ・クリスティーの『ABC殺人事件』を読みました。 殺人というのはつくづく面倒な行いだと思う。 以前森博嗣のVシリーズの一作を読んでいたとき、面白いと思う台詞があった。 Vシリーズは没落した旧家の令嬢・瀬在丸紅子を主人公とするシリーズで、私は…

アガサ・クリスティー『第三の女』感想

アガサ・クリスティーの『第三の女』を読みました。 表紙が孔雀なのは笑いました(笑うところではないかもしれない)。孔雀。 「第三の女」というタイトルはどういう意味なのだろうと読む前は思っていたのですが、なるほどです。しかし意味深いというか、誰…

岸政彦『図書室』感想

岸政彦さんの『図書室』を読みました。 まずご自身で撮られたという表紙の河川敷の写真(川面は少し波立っている)と直筆のタイトルと著者名がいいんだわ…。『図書室』なのに河川敷?と思ったけれど、なるほど、これは確かにこの表紙でなければならなかった…

アガサ・クリスティー『そして誰もいなくなった』感想

アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』を読みました。 ぐうううううう。夢中で読んでしまいました。今年から始まった(別に意図的に始めたわけではなく、クリスティー面白いじゃんと遅ればせながら気づいた2020でした)クリスティーを読もうチャ…